
社会に出て多くの人と接していると、ごく稀にではありますが、「自分の考えこそが正しい」と強く信じている方に出会うことがあります。
例えば、こんな会話です。
Bさん「このバンドいいんだよね。派手なギターがかっこいいし、ドラムも体に響いてくるんだよ。」
Aさん「あんなうるさいだけの音楽なんか聴いていたら駄目だよ。〇〇みたいなハイセンスなバンドを聴かないと。」
Bさん「〇〇は聴いたことあるけど、僕の趣味じゃないし。」
Aさん「そんなのばっかり聴いてるから、本物の音楽がわからないんだよ。」
Bさん「……。」
また別の場面では、
Dさん「最近、車の調子がよくないんだよ。」
Cさん「あんな〇〇社の車なんか乗ってるからだよ。あのメーカーは電気系統が弱いって有名じゃないか。」
Dさん「……。」
これらは、私が実際に耳にした会話の一部です。
頻繁にあるわけではありませんが、こうしたやり取りに出会うことがあります。
このような場面で感じるのは、「言葉ひとつで人との距離は簡単に広がってしまう」ということです。
当然ながら、BさんやDさんはその後、否定された話題をAさんやCさんにすることはなくなっていきます。
やがては会話そのものが減り、少しずつ距離ができてしまうこともあります。
営業の世界では、「野球と宗教の話はするな」とよく言われます。
意見が分かれやすく、相手の価値観を傷つけてしまう可能性があるからです。そして結果として、信頼関係が崩れ、物も売れなくなる。
これは何も営業に限った話ではなく、人と人との関わり全般に言えることなのだと、私はこうした経験から学びました。
それ以来、私は人と話をするときに「否定から入らない」ことを強く意識するようになりました。
自分の好きなことを話すときも、相手の話を聴くときも、まずは受け止める。
たとえ自分の好みとは違っていても、「違う=間違い」ではないということを忘れないようにしています。
例えば、自分があまり興味のないジャンルの話をされたときには、
「私は○○が好きなんだけど、そのジャンルのどんなところが魅力なの?」と尋ねてみる。
また、車の話であれば、
「そのメーカーの車は乗ったことがないんだけど、実際の使い心地はどう?」と、相手の経験に耳を傾ける。
そうすることで、会話は途切れることなく続き、むしろ相手の思いやこだわりを知るきっかけにもなります。
人は誰しも、自分の好きなものや大切にしているものを否定されると、心を閉ざしてしまうものです。
逆に、それを受け止めてもらえたとき、安心して言葉を交わせるのではないでしょうか。
自分の子供に対しても全く同じ事が言えるのではないかと思います。
ほんの少し言葉を選ぶだけで、人との関係は大きく変わります。
私はこれからも、否定ではなく「理解しようとする姿勢」を大切にしながら、人と向き合っていきたいと思っています。

