私は決して早起きが得意な人間ではありません。それでも、職場へは必ず始業の30分から1時間ほど前に到着するようにしています。休日にアロマを楽しむためコーヒーミルで豆を挽き、職場でゆっくりと時間をかけて一杯のコーヒーを淹れます。事務所いっぱいに広がる香ばしい香りを感じながら迎える朝は、忙しい日常の中でほんのひととき心を落ち着かせてくれる大切な時間です。こうして一日を余裕をもって始めることで、どんなに慌ただしいスケジュールでも不思議と乗り越えていける気がするのです。

しかし、最初からこのような生活をしていたわけではありません。30歳頃までの私は、電車の時間ぎりぎりに目を覚まし、朝食もそこそこに家を飛び出しては小走りで駅へ向かう毎日でした。周囲の景色を見る余裕などなく、ただ「遅れないこと」だけに必死だったのです。

そんな私に転機が訪れたのは、ある早朝のことでした。なぜか目覚ましよりも早く、すっと目が覚めたのです。その日はゆっくり朝食をとり、いつもより一本早い電車に乗るにも余裕がある時間であった為、歩くペースも落としてみました。

すると、そこには今まで気づかなかった世界が広がっていました。澄みきった青空には白い雲が点在し、はるか高い空を飛行機が静かに横切っていきます。駅まで続く公園には瑞々しい緑があふれ、小鳥たちが楽しそうにさえずっていました。全てが鮮やかなスローモーションのように私の心に映り込みました。

「自分は毎日、こんなにも美しい場所を通っていたのか」

胸の奥がじんわりと温かくなり、同時にこれまでの慌ただしい日々を少しだけ悔やみました。景色を味わう余裕もなく過ごしてきた時間が、もったいなく思えたのです。

その日を境に、私は早めに起き、目的地へは余裕をもって向かう生活を続けています。時間に追われる人生から、時間を感じながら生きる人生へ。ほんの小さな習慣の変化でしたが、それは私の心に大きなゆとりと豊かさをもたらしてくれました。

忙しさの中で見失いがちな日常の美しさは、少し立ち止まることで初めて見えてくるのかもしれません。今では、朝の静かな空気とコーヒーの香り、そして何気ない風景こそが、私にとってかけがえのない宝物となっています。

By Alex

楽しい時も辛い時も全て私の人生。

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