珈琲を「ただの飲み物」から「最高の嗜好品」として意識するようになったのは、今思えば若い頃のある出来事がきっかけでした。


当時の私にとって珈琲とは、甘くて少し苦いけれど美味しいもの。缶コーヒーか、せいぜいコーヒー牛乳の延長線上にある、少し大人びた飲み物という程度の認識でした。

学生時代、アルバイト先の店長に連れられて入った小さな珈琲専門店。
「ここの珈琲、美味しいんだよ。何にする?」
そう聞かれてもよく分からず、「じゃあ、お勧めでお願いします」と答えたのを覚えています。

運ばれてきた珈琲に、いつもの癖でミルクや砂糖を入れようとした瞬間、店長が笑いながら言いました。
「騙されたと思って、まずブラックで飲んでみて」

恐る恐る口を近づけた瞬間、飲む前から立ちのぼる香りがすっと鼻を抜けました。ひと口含むと、苦味は控えめで、豆そのものの甘さが香りと一緒に口いっぱいに広がります。その一杯のモカで、私の中の「珈琲」という概念は、文字通り180度ひっくり返りました。

それ以来、家で飲む珈琲でもできるだけ豆のまま購入し、飲む直前に挽いて淹れるようにしています。インスタント珈琲に比べると珈琲豆は高価なものですがペットボトルの珈琲飲料や缶コーヒーに比べると1杯辺りの価格はずっと安いものです。確かにインスタントに比べれば手間もかかり、タイパ(時間効率)も良いとは言えません。

でも、豆を挽いた瞬間に広がる香り、静かに湯を注ぐ時間そのものが、私にとっては何よりの癒しです。

珈琲を淹れる時間は、忙しい日常の中で自分を取り戻す、ささやかで贅沢なひとときなのかもしれません。

PR:澤井珈琲(モカ)

By Alex

楽しい時も辛い時も全て私の人生。

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